書評:ゴールデンスランバー/伊坂幸太郎
伊坂幸太郎の最新作、ハードカバーで約500ページに及ぶ大作。
首相公選制が採用された架空の日本、出身地である仙台で行われた凱旋帰郷パレードの最中、首相が暗殺されます。第一章「事件のはじまり」から第三章「事件から二十年後」まではいかにして事件がおきたかということや、いかに不思議な事件だったかといったことが、サイドストーリーとして語られます。謝辞にもあるのですが、ストーリーのモチーフはケネディアメリカ大統領の暗殺事件です。
そして、400ページ以上に及ぶ第四章がメインストーリー。主人公の青柳雅春が大学時代の旧友である森田森吾にいきなり呼び出される所から話は始まります。
青柳に対し、このままではケネディ暗殺事件(*1)の犯人とされているオズワルドになってしまうぞと森田は警告する中、遠くで爆音が聞こえ、首相暗殺事件が発生します。その後、青柳はいきなり警官に銃を向けられ、逃走を開始します。
連続通り魔を捕まえるお題目の元設置されたセキュリティポッドという監視システムの網の中、青柳は逃走を続けます。「人間の最大の武器は習慣と信頼」という森田の言葉を一つの拠り所にし、青柳は直接的、間接的に周囲の支援を受けつつ、強大な権力から逃走を続けていく青柳の姿、読んでいる側はどんどん引き込まれていきます。
途中に挟まれている過去のエピソードが見事な伏線となってストーリーが進み、物語はクライマックスを迎えることとなります。忘れてしまいそうなエピソードまでをきちんと組み込むストーリーはさすがだなあと思わされます。
小説自体の完成度としては、ラッシュライフやアヒルと鴨のコインロッカーの方が正直面白いのではないかと思います。ただ、「対峙しなければいけない得体の知れないもの」に対して、伊坂幸太郎と抱えている思いというものが、本書には現れている気がしました。
なぜそういうことを思ったかというと、宣伝会議の2月号の巻頭インタビュー(*2)において「贅沢なのは分かっているんですけど、伊坂幸太郎をやめたいなあ、と思うこともあります。バンドだったら解散」と等と今回の作品に至るまでの苦闘を語っている内容が推測の根拠だったりするわけですが、そのような思いを除いたとしても十二分に面白い作品でした。
貸してくれた24君、ありがとう。
*1 Wikipedia:ケネディ大統領暗殺事件
*2 立ち読みしただけなので、詳細は覚えていません。
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